いきるをつくる - たべること、きること、つくること、つかうこと、知ること、感じること
買い付け日記
2020 / 06 / 05

Rap!Rap! ~手しごとを伝える~

世の中に溢れるモノ。

大量生産。使い捨て。利益重視のモノづくり。

その恩恵を享受しているわたしたちですが、そこに疑問を持ち、手づくりのもの、温もりを感じるもの、生産者や背景のわかるものを求める風潮が近年広がりつつあります。

わたしたちがそれに求めるものはなんなのでしょうか?

私たち mumokuteki には、その答えに繋がりそうな出会いがありました。


 

以前にもワークショップを交えてご紹介したRap!Rap!の山田憲栄さん。

4種類の金属を用い、永い時を経たような手触りや、こっくりと深みのある色あい、そして思わずにんまりしてしまいそうな、他にはないユニークなモチーフでファンの多い作家さんです。

その手法は、金属の板からひとつひとつを手作業で切り出し、焼成や化学変化によりその金属に眠る色や表情を引き出すのが特徴です。

( 詳しくは前回の「Rap!Rap! の工房訪問とワークショップ」のページをご覧ください。

作品づくりの様子を写真付きでご紹介しています!→Rap!Rap! の工房訪問とワークショップ)

その過程で、素材の金属の板を金槌で叩いて成形したり模様をつけます。

その叩く音を表現した擬音 rap rap (ラップラップ)がそのまま〈 Rap! Rap! 〉の由来になっています。

今回の訪問でも、プレートを叩いて仕上げの作業を実演してくださいました!


プレートにアールをつけていきます

浮き出てきた模様は意外とさらっとしてなめらか

 

そんなRap!Rap!といえばブローチが代名詞ですが、はじまりのきっかけはなんだったのでしょうか?お話を伺ってきました。

山田憲栄さんは、会社員を辞めて一念発起、京都伝統工芸専門学校で金工を学び、独自にRap!Rap!としての活動を始められました。2010年のことです。ある時、山田さんの知り合いに、カフェの看板制作を依頼されました。その際、カフェのスタッフがおそろいで身につけられるものをつくってほしいと相談を受け、山田さんはオリジナリティを表現しやすく、人によってサイズを変えず簡単に身につけられるブローチを提案したそうです。当時制作したものは、ごくシンプルな形のもの。そこから、動物や植物・風景・身の回りの生活用品から、山田さんの感性でイラストをおこし、モチーフとして切り取られました。金属同士の重なりや型押しで立体感が生まれ、バーナーで炙りだされた発色はあたたかみを感じる表情に変化。様々な試行錯誤を経て、今のスタイルに辿りつきました。当時、看板制作のみで終わっていたら、ブローチは生まれていなかったかもしれません。人との繋がりに不思議な縁を感じずにはいられません。


 

もうひとつ、印象的なエピソードをお聞きしました。Rap!Rap!のユニークなモチーフの中でも、異彩を放つ「お城のブローチ」。皆さんも他にないデザインに驚いたのではないでしょうか?この「お城のブローチ」が誕生したのは、山田さんのご友人が、熊本で被災された時だそうです。暗い気持ちをなんとか励まそうと、思いついたモチーフは、熊本県を象徴する「熊本城」。金属のもつ重厚感の中に、手描きのほっこりした表情が、きっと鬱屈した空気をやわらかな光で包み込んでくれたのでしょう。山田さんはご友人の笑顔を感じることができました。

この時つくられた黒壁の熊本城は世界にひとつしかなく、これを元に白壁のお城のブローチが

作品に仲間入りしました。

最後に、山田さんが今後、Rap!Rap!としてやってみたいことをお尋ねすると、「展覧会やクラフトフェアなど、直近で5つも予定を抱えているから、忙しい中でも、頼まれている仕事をきっちりやり切って、みんなが喜んでくれるものをつくっていきたい」と仰られました。

「やっぱり自分がつくったものを、嬉しそうに手にとって喜んで買ってもらえた時は嬉しいかな」とも。

レーザーカットで大量に作れば、効率よくキレイな形に仕上げることもできます。でも、山田さんは敢えて手作業にこだわります。よれた線も、ひとつづつ微妙に違う形や大きさも、Rap!Rap!には欠かせない大切な味わいになるからです。時間も手間もかかるけれど、そんなぬくもりある作品を届けたい。ひたむきに取り組む作家、山田憲栄さんの想いをみました。

今回、私は2度目の工房訪問となりましたが、毎回、人との絆を大切にする山田さんだからこそ、生み出せる作品なのだと気づかされます。作品そのものが持つ無骨さと可愛らしさは、そのまま山田さんと重なっているからです。そして、その作品のファンである私たちも、mumokutekiでRap!Rap!と出会ったあなたも、出会えた時の感動と、身につけた時の一体感と、自分以外の人との共感と、この循環の中で、ひとと繋がっているという想いを抱くのかな、と ふと、よぎりました。

山田さんの作品は、手にとって自分の目で見てから買ってほしいとの想いから、クラフトフェアなど、対面での販売がほとんどです。作家さんとお客様を繋げてお届けするに私たちmumokutekiも、その想いを大切に、直接工房を訪問して、ひとつひとつ手にとって吟味しながら買い付けを行っています。

 

僅かですが新作デザインや、今回初となるカトラリーや、ピアス・イヤリングの買い付けもさせていただきました!!実際に手に取っていただけるのを楽しみにしております!

 

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